創作脚本

素敵な夢はムーンウォークとともに

H24 仙台商業高校単独公演

素敵な夢はムーンウォークとともに

<キャスト>

ティナ
白ウサギ
帽子屋
女王様
チェシャ猫
アリス
SP2
SP3

序章
ティナ木陰でアリスからもらった本を読んでいる。
ティナ 「その不思議の国ではお花や動物たちが楽しそうにお話していました。アリスはそれを眺めながら白ウサギと帽子屋とお茶会を楽しみました」
本のページを捲る
ティナ 「いいなぁ。こんな世界。不思議の国ねぇ…。行ってみたいなぁー…まあ無理だろうけど」
読書を続けるがだんだん眠くなり寝てしまう。

第一章
(音響)(照明)
白ウサギ登場、ティナに気付き近づく
白ウサギ「人!?何でこんな所に?大丈夫かな?もしもーし。生きてますかぁ?」
ティナ起きて白ウサギに気付く。
ティナ 「う~ん」
白ウサギ「ああ、良かった生きてた」
ティナ 「あなた誰?」
白ウサギ「ていうか君の方こそ誰だい?」
ティナ 「あら、人に尋ねる前に自分から言うのが常識よ。先に自己紹介してちょうだい」
白ウサギ戸惑いながら
白ウサギ「えっ、あ、えっと…僕は白ウサギ。この国の裁判官をしてるんだ」
ティナ 「白ウサギ?変な名前ね」
白ウサギ「そうかなぁ。この国じゃ普通だと思うんだけど…」
ティナ 「この国…?ていうかここはどこなの?」
ティナ、辺りを見回す
白ウサギ「どこって…ここは不思議の国さ」
ティナ 「へー。不思議の国って…ん?不思議の国!?不思議の国ってあの!?」
白ウサギ「あの?あのって…どの?」
ティナ 「スゴい…ホントにあったんだ…ってことは…お茶会!!」
白ウサギ「えぇ!?」
ティナ 「お茶会よ!お茶会に連れて行って!」
白ウサギ「ちょ、ちょっと待って!落ち着いて。僕はまだ君の名前も何も知らないんだよ?いきなりお茶会に連れていけるわけないだろう?」
ティナ少し考えて
ティナ 「しょうがないわね。じゃあ自己紹介してあげる。私はティナ。お母さんからもらった『不思議の国』っていう本をそこの木の下で読んでたんだけど、だんだん眠くなっちゃって寝ちゃったの。そして、起きたらこんな所にいたってわけなの。」
白ウサギ「こんな所って…君は別の国、いや世界から来たってことなのかい?」
ティナ 「さぁ。でも、私のいた所とは違うからそうなんじゃないかしら。」
白ウサギ「…」
ティナ 「ちょっと聞いてるの?」
白ウサギ「他の世界から…アリスと一緒だ。アリスと同じ世界から来たのかな…だったら…。君の世界では花や動物は話しをするかい?」
ティナ 「えぇ!?動物が話したらおかしいでしょ。」
白ウサギ「やっぱり!アリスと同じ不思議じゃない世界から来たんだね!」
ティナ 「アリスって…」
白ウサギ「あっ、アリスって言うのは前にこの世界に来た子なんだけど…」
ティナ 「もしかして…」
白ウサギ「君、アリスと知り合いなの?」
ティナ 「私のお母さん?」
白ウサギ「お母さん?」
ティナ 「だから、私のお母さんアリスっていう名前で、子供の頃に不思議の国に迷い込んだ事があるって言ってたの」
白ウサギ「そっか、じゃあ君はアリスの娘なんだね。ってことは…ふしぎの国を変える事が出来るかもしれない」
ティナ 「え?何の事?」
白ウサギ「わかった。ぜひお茶会に参加してもらいたい!」
白ウサギ懐中時計で時間を見る
白ウサギ「おっと時間だ!アリスの娘さん、早く行かなきゃ!」
ティナ 「だから、ティナだって」
白ウサギ「ティナ、僕についてきて!」
白ウサギ、走り出してはける。
ティナ 「ちょっと待ってよ」
ティナは白ウサギを追ってはける
白ウサギ「あ~急がなきゃ~!間に合わない!ティナ、こっちこっち!」
白ウサギはける、ティナ出て来る。
ティナ 「ハァ、ハァ、もう、そんなに急がないでよ。脱兎の如くとはまさにこの事ね」
ティナはける

第二章
お茶会の準備を終えた帽子屋が椅子に座っている。そこに白ウサギが登場。
帽子屋 「おっと客人が来たようだ」
白ウサギ「帽子屋!…」
帽子屋 「白ウサギ、遅いじゃないかい」
白ウサギ「帽子屋、今アリスの娘さんがこの国に来ている!」
帽子屋 「アリスって…あの!?」
白ウサギ「そうだ、あのアリスだ!」
帽子屋 「何だと!」
白ウサギ「道に迷ってなければ、もうすぐここに来ると思うんだけど…」
帽子屋 「お前はすぐそうやって…、ちゃんと道案内しろよ!」
白ウサギ「いや、道まっすぐだから、迷わないと思うんだけど…」
帽子屋 「そそっかしいのは、一生治らないな。まぁいい、そういう事なら準備を手伝ってくれ」
白ウサギ「わかった」
帽子屋と白ウサギ、お茶会の準備をする。そこへティナが息を切らしながら登場
ティナ 「白ウサギ!もう、置いていかないでよ!」
白ウサギ「おおう、来た来た」
帽子屋 「いらっしゃい、お嬢さん。白ウサギから聞いたんだけど、君のお母さんはアリスって言うんだって?」
ティナ 「そうだけど」
帽子屋 「そうか。懐かしいなぁ、確かにアリスの面影がある。でも、アリスと遊んだのはほんの数年前だぞ?」
白ウサギ「きっと不思議じゃない国って、時間が経つの早いんだよ」
帽子屋 「うん。そりゃ不思議だ。しかしまた同じ国の子が来るとは、どういう事だろう?」
ティナ 「ところであなたは?」
帽子屋 「おっといけねえ、俺は帽子屋。見ての通りのナイスガイだ」
白ウサギ「イカレ帽子屋とも呼ばれてるけどね」
帽子屋 「うるさい!」
ティナ 「その帽子を売ってるの?」
帽子屋 「これは俺のお気に入りさ。帽子屋なのに売り物の帽子は無い。ハハハ」
ティナ 「変なの。ところでお茶会ってここで?」
帽子屋 「あぁ。何か?」
ティナ 「いえ、もうちょっと賑やかで、楽しいイメージがあったから」
帽子屋 「…まぁ、あれだ。部員の都合というか…照明専門の俺が舞台に立っているだけでも、すごいと思わないかい?」
ティナ 「そうね。不思議じゃない国では、あり得ない話だわ」
帽子屋 「今頃私の可愛い部下が、調光室であたふたしているぞぉって…話が変な方向に向かっている…。まぁ立ち話もなんだし、お茶でも飲もうじゃないか」
帽子屋テーブルの上に紅茶などを用意。
帽子屋 「この紅茶は、オレンジカッカって言ってね、オレンジの奴を怒らせれば怒らせるほどいい茶葉が出来るんだ」
ティナ 「へぇ~」
帽子屋 「ところで君、名前は?」
ティナ 「ティナ」
帽子屋 「ティナか。いい名前だ。砂糖とミルクは入れるかい?」
ティナ 「あ、お願いします」
全員席に着く。
帽子屋 「では、どうぞ」
ティナ 「あら、美味しい」
白ウサギ「うん。いつもながら、紅茶を入れる腕前だけは一流だ」
各自お茶を飲みながらの話となる
帽子屋 「ところで白ウサギ、昨日はついにアイデルンの所に大臣が押し入ったそうだ」
白ウサギ「ええ!アイデルンは無事なのか?」
帽子屋 「あのじいさんの事だ、簡単にくたばらないとは思うけど…」
白ウサギ「だといいんだけど…」
帽子屋 「ただ、どこに隠れているのかまでは…」
白ウサギ「そっか…」
ティナ 「何かあったの?」
帽子屋 「ティナ、今この国は危機的状況なんだ」
ティナ 「どういうこと?だって、本の中じゃあんなに楽しそうな国で…」
帽子屋 「本の中ではそうだが、今この国では色々な問題が起きているんだ」
白ウサギ「至るところで暴動が起き、たくさんの人が犠牲になっている」
帽子屋 「まあ、女王様があんなんだからなぁ…。暴動が起きてもおかしくはないんだけど」
ティナ 「え…?」
白ウサギ「帽子屋、女王様は悪くないだろう?ただ、城の者たちを始め、僕たちが女王様を信じていなさすぎるんだよ」
帽子屋 「この国の女王はつい最近変わったんだよ。だけど、国民の信用がなければ女王が国をおさめるなんて無理な話だろう?」
ティナ 「ええ、それはわかるんだけど…。ハートの女王だって国民から好かれていなかったんじゃないの?」
帽子屋 「おお、けっこう詳しいじゃないか」
ティナ 「本で読んだわ。傍若無人で…自己中心的で、気に入らない人は全て潰してしまうような人だったんでしょ?」
帽子屋 「そう。それを快く思っていなかったのがジャックっていうスペードの王子」
白ウサギ「大きな声じゃ言えないんだけど、そのジャックが、女王を暗殺しようとしたんだ」
ティナ 「えぇ!そんなの知らないわ」
帽子屋 「だから、ティナの知ってる物語から、更に時間が過ぎてるってこと」
白ウサギ「ところが、女王は傷を負ったものの、一命を取り留めたんだ」
ティナ 「それで?」
白ウサギ「女王は、自らの声と引き換えにジョーカーの力を使って、ジャックを殺害してしまったんだ。そして、今はどこにいるか我々も知らない」
帽子屋 「そこで、新しく女王の座に就いたのが、女王の一人娘ってわけ」
ティナ 「へー」
帽子屋 「ところがその娘は、不思議じゃない国の物語にしか興味がなく、一日中本の世界に入り浸っていて、女王としての自覚が全くないんだよ」
白ウサギ「今まで力で抑えつけられてきた大臣たちは、ハートの女王もジャックも居なくなったもんだから、もう好き放題。そっちこっちでイザコザが起きて、そして国民がその犠牲になっているってわけ」
ティナ 「頼りない女王様ね」
白ウサギ「帽子屋、ここはティナに頼んでみるっていうのはどうだろう?」
帽子屋 「うん。今俺もそれを考えていた所だ」
ティナ 「何の話?」
白ウサギ「よし。ティナ、これはアリスの娘である君にしか頼めないことなんだ」
ティナ 「何よいきなり?」
白ウサギ「単刀直入に言う。この国を救ってほしいんだ」
ティナ 「どういうこと?」
白ウサギ「不思議の国の現状を打開するには、国のトップ、つまり女王様の力が必要になる」
ティナ 「じゃあ、その女王様とやらに直接頼めばいいじゃない」
白ウサギ「…そこなんだ」
ティナ 「?」
白ウサギ「実は女王様は極度の人見知りで、面識のない人とは会ってくれない。昔から知っている人としか関わろうとしないから、大臣とは今までまともな話し合いなんて一度もできていないんだ」
ティナ 「へぇ、大変ね」
白ウサギ「ティナ、女王様を説得してもらえないだろうか」
ティナ 「私?あなたが説得すればいいじゃない」
白ウサギ「確かに僕は女王様と面識はある。だから今まで何度となく話に行ってはいるけど、一度も聞いてもらった事はないんだ」
ティナ 「帽子屋さんは?」
帽子屋無言で紅茶を啜る
白ウサギ「彼は、女王様と面識が無い…」
ティナ 「じゃあ、私でもだめなんじゃないの?」
白ウサギ「君のいた不思議じゃない国が女王様のお気に入りの本になっていることはさっきも話したよね?」
ティナ 「えぇ」
白ウサギ「女王様だって、大好きな本の住人が来たと知ったら心を開いてくれるんじゃないかと思うんだ…。僕たちはそれに賭けてみたい。頼む!」
ティナ 「…」
白ウサギ「何でもいいんだ!話し合いまでいかなくても、女王様の心が動いてくれれば!」
ティナ 「何で私がそんな事を…」
帽子屋 「君が手助けをして国が救われれば、国の者たちは君を英雄として称えるだろう。どこのお店に入っても、顔パス。欲しいものは全て手に入り、街ゆく人たちの視線は君に釘づけ。願い事なんかすぐ叶っちゃう!」
白ウサギ「もし、君がこのまま元の世界に帰ってしまったら、この国はこのまま滅んでしまうかもしれない…。」
ティナ 「…分かったわ。助けてあげる」
白ウサギ「ありがとう!じゃあ今から女王様の所に行こうじゃないか!」
(暗転or薄明かり)

第三章
女王様が椅子に座り本を読んでいる
女王様 「不思議じゃない国かぁ行ってみたいなぁ。動物たちや花が喋らないなんて。どうやって意志疎通しているんだろう!」
ノックの音
女王様 「誰?」
白ウサギは袖から声だけ
白ウサギ「白ウサギにございます」
女王様 「今は忙しいの。また後にして」
白ウサギ「本日は特別な用件で参りましたので、後には出来ません」
女王様 「特別な用件って何よ」
白ウサギ「それは中で話しますゆえ、入ってもよろしいでしょうか?」
女王様 「はぁ(溜息)。じゃ、ちょっとだなら」
白ウサギ登場
白ウサギ「失礼します。女王陛下、陛下にはご機嫌うるわしく、何よりと存じております…」
女王様 「挨拶はいいから。特別な要件って何?」
白ウサギ「はい。本日は、陛下にお目通りして頂きたい者がおりまして、連れて参りました」
女王様 「えっ!?」
白ウサギ「実は、その者は不思議じゃない国の住人なのです。どうか会っていただけませんでしょうか?」
女王様 「不思議じゃない国の?…。わ、わかりました。通して下さい」
白ウサギ「おお!陛下、ではしばしお待ちを」
女王様、緊張した面持ちで椅子に座り直す。ティナ・帽子屋入る。一礼。
ティナ 「失礼します」
ティナ、白ウサギのを追い抜いて前に出る。
ティナ 「あんたが女王様?なーんかイメージしてたのと違うわねぇ」
女王様に近づきじろじろと見る。女王様少し怖がる。白ウサギ、二人の間に入る。
白ウサギ「ティナ、陛下をあまり怖がらせないでくれ。…女王陛下、この男は帽子屋、こちらの女は不思議じゃない国の住人でティナと言います」
女王様 「こ、この人が…不思議じゃない国の方?こんなに恐ろしいなんて」
ティナ 「だ、誰が恐ろしいのよ!!」
白ウサギ「ティナ、もう少し言葉を…」
ティナ 「私のやり方で、話すからあんた達は黙ってて!女王様、あなたはこの国の今の状況を、おわかりなのですか?」
女王様 「大臣から伝え聞いてはいますわ」
ティナ 「じゃ、どうして何とかしようと思わないの!」
女王様 「どうしたらいのか私にはわからないのです」
ティナ 「呆れた女王様ね」
女王様 「…私はお母様が行方不明になって、国を治める者がいなくなったから、無理やり女王にさせられたのです。それに、国の事は全て大臣に任せてあります」
ティナ 「何よ、じゃあアンタ全然頼りになんないの?だったら大臣の所に行きましょうよ。こんな子に頼んだって無駄じゃない」
女王様 「私だって!私だって国の状況をどうにかしたいと、思ってはいるんですが…」
ティナ 「ふん、何よ!思ってるだけで、具体的に行動は出来ないんでしょ?全くの役立たずじゃない!」
女王様 「…」
ティナ 「教えてあげる。それって現実逃避って言うのよ。人見知りだか何だか知らないけどね、本の世界ばかりに夢中になっているなんて、あまりにも自己中なんじゃない!?アンタには女王様の椅子に座る資格なんて無いのよ!!」
女王様 「あなたに何が分かるんですか!」
女王、立ち上がり、はける
白ウサギ「陛下!お待ち下さい!」
女王様について行ってはける
ティナ 「もう知らない!私達だけで大臣の所に行きましょう。あんな女王じゃ話にならないわ!」
帽子屋考えるポーズをとっている。
ティナ 「ちょっと、聞いてるの」
帽子屋 「…ん、あぁ。そうだね」
ティナ 「ほら、行くわよ」
ティナは先にはける(女王様と反対の方向に)
帽子屋 「ああ…。ちっ。ティナがまさかああ言うとはな~。おまけに女王と対立しやがって。これじゃあ予定通りに進まないじゃないか。…仕方ないな、この国を俺のものにするためにもアイツには悪役になってもらおうか」
帽子屋ニヤリと笑うと、ティナを追ってはける
(照明薄明かりになる)(音響で静かさをカバー)

第4章
ティナ、舞台に出てくる
ティナ 「あれ、ここどこ?帽子屋ー。もう、道に迷ったじゃない。あんな女王じゃ、だれもついてこないわよ。ずーっと本の世界に入り浸っていればいいのよ」
どこからか猫の鳴き声。チェシャ猫登。
チェシャ猫「ニャー」
ティナ、ビックリして辺りを見回す。
ティナ 「えっ何?猫?」
チェシャ猫「あーぁ。ずーっと見てたけどさぁ、君、女王に一方的に言うだけ言たね」
ティナ 「それがどうかしたの?」
チェシャ猫「それで、女王の考え方を改めさせようとしたつもりかい?」
ティナ 「引きこもりの女王には、厳しく言ってやんなきゃ分かんないのよ」
チェシャ猫「なるほどねぇ」
ティナ 「ところで、隠れていないで出てきなさいよ!」
チェシャ猫「君はもう少し相手の立場に立って考えることをしないと、この先捕まっちゃうよ」
ティナ 「捕まる?何に捕まるっていうのよ」
チェシャ猫「この世界には、君を狙っている人はたくさんいるんだ。気づいていないだろうけどね。じゃ~ね~」
チェシャ猫去る
ティナ 「ちょっと、まだ話し終わっていないわよ…」
帽子屋 「お、こんな所にいたのか」
ティナ 「なんか、ここって変じゃない?」
帽子屋 「っていうと?」
ティナ 「同じ方向に歩いていたはずなのに、同じ場所に戻ったりするし…」
帽子屋 「あぁ、城の中は至る所に魔法が仕掛けてあるから、仕掛けを知らないものが歩くのは難しいだろうな」
ティナ 「だったら、ちゃんと道案内しなさいよ」
帽子屋 「あー、悪い悪い。ところで、俺も初めて女王様を見たけど、やはりありゃだめだな。国を治める力量など、これっぽっちも感じる事が出来なかったよ」
ティナ 「そうね。府抜けた女王だったわね」
帽子屋 「そこで思ったんだが、この国を救うには別の方法を取った方がいいと思うんだ」
ティナ 「っていうと?」
帽子屋 「別の女王を。それも物事をはっきり言える君のような女王を迎えれば、この国は救われると思うんだ」
ティナ 「そうねぇ。それがいいかもしれないわね」
帽子屋 「そこでだ、もう一度、女王に面会を願い出るんだ。理由はなんでもいいさ」
ティナ 「そして?」
帽子屋、ティナの肩を抱く
帽子屋 「…君が女王を殺せばいい」
帽子屋はニヤリと笑う。ティナ、絶句
ティナ 「そんな事出来ないわ!!」
帽子屋 「出来るさ、君はあの子が嫌いだろう?あんな自己中な子がいなくなれば国は安泰。君が手を下した事は誰にもばれないように、この俺がうまくやるよ」
ティナ 「イヤ!絶対にイヤよ!それに私はこの国を手に入れたいなんて思ってない!」
帽子屋 「何でだよ?この国を手に入れればなんでもできるんだよ?ここは不思議の国だ。何が起こったって不思議じゃない。さぁ、一緒に理想の国を築かないか!」
ティナ 「不思議の国だからって何よ!私はそんなこと望んでないし、人殺しなんて出来ないわ!」
帽子屋 「そうかっかするなって。何も条件が悪いわけじゃあないだろ?」
ティナ 「いい条件でもないでしょ?第一あの子を殺すなんて…!あの子は何も悪くないのよ!?」
帽子屋 「なんでそう思う?彼女は女王になったと言うのに現実をいつまでも見ず、国民の前に現れようともしなかったんだよ?責任感などこれっぽっちもない。それで悪く

ないっていうのかい?」
ティナ 「確かにそれは問題かもしれない」
帽子屋 「そうだろう?だから、今この国を立て直すためには、君のようなしっかりと物事を言えるリーダーが必要なのさ。君が女王になれば、国民は君を祝福するだろう。うん。やはり新しいリーダーを迎えるためには、女王には悪いが事故に遭ってもらう必要が…」
ティナ 「それは違うわ。確かに彼女は無責任だと思うけど、私の説得の仕方にも問題があったんじゃないかって思うの」
帽子屋 「それはちがうさ。彼女自身変わろうとしてないんだよ?何を言ったって無駄さ」
ティナ 「だからって、どうして殺すなんていう発想が出来るのよ」
帽子屋 「俺は、大臣たちの餌食になっている仲間や、国民を救いたい。そのためには、大臣たちを統率できる力を持った女王が必要なんだ」
ティナ 「…私はあの子と仲直りがしたい。」
帽子屋 「君が女王になればこの国が救われるとしても?」
ティナ 「そんなの知らない。それにあの子じゃなきゃ意味がないでしょ?この国の女王は」
帽子屋 「それも一理あるけど、女王は変わってもおかしくないんだ!」
ティナ 「そうかもしれないけど、私はあの子じゃないとダメだと思うのよ。根拠なんてないけど、女王はあの子であるべきなの」
帽子屋 「君がそこまで言うなら一歩譲ってやろう、じゃ、彼女が女王のままでこの国が救われる方法があると思うのかい?」
ティナ 「それは分からない、でもやれることはやるわ」
帽子屋 「いいだろう、なら賭けをしよう。もし君が女王の態度を改めさせ、この国から争い事が無くなれば、この国を君に治めてもらうことは諦める。しかし、できなかったなら…わかるね?」
ティナ 「いいわ、受けて立とうじゃないの」
帽子屋 「大した自信だ。さて、話はまとまったことだし失礼するよ」
帽子屋不敵な笑みを浮かべムーンウォークではける
ティナ 「賭け…ねぇ。」
ティナ独り言を行った後ゆっくりとはける

第五章
女王様舞台に早足で出てくる
女王様 「何なのあの子!!突然お城に来たと思ったら『国の問題を解決しろ』とか『役立たず』とか…何なのよ!私だって、考えているのに…。女王になんか、なりたくてなったわけじゃないのに…。大臣たちはやりたい放題。私の意見なんか聞いてくれやしない…。私がまだ子供だから?政治の事を知らないから?私なんて…役にたたないんだわ…。」
チェシャ猫「ニャー」
女王様 「猫?どこかしら…」
チェシャ猫「やぁ、女王様」
女王様 「だ、だ、誰!?」
チェシャ猫「おやぁ?僕を知らないのかぁ~。それは悲しいなぁ。僕はチェシャ猫さぁ。」
女王様 「チェシャ猫?」
チェシャ猫「そっ。君の事はよーく知ってるよぉ?人見知りでネガティブな女王様だよねぇ?」
女王様 「…」
チェシャ猫「君も大概、自分勝手だねぇ。」
女王様 「…ほっといてよ。あなたも私に役立たずって言いに来たの?」
チェシャ猫「役立たず?国民はだぁれもそんなこたぁ言ってないけどねぇ?」
女王様 「でも…あの子は…」
チェシャ猫「あの子…?あぁ。ティナのことかぃ?」
女王様 「何で…あの子を知ってるの!?」
チェシャ猫「ずーっと見てたからねぇ。君がティナに『役立たず』って言われているところもね」
女王様 「あの子…何であんな風に言うのよ…私ばっかり、どうして責められなきゃならないのよ…」
チェシャ猫「君が自己中だからじゃあないかい?」
女王様 「なんで私が自己中なのよ…?自己中なのはあの子の方じゃない。見ていたのならわかるでしょう?」
チェシャ猫「僕からすれば一緒さぁ。君もあの子も、自己中心的な考えしか持ってないみたいだねぇ?やれやれ、そんなんじゃあ何も解決しないさぁ」
女王様 「じゃあ、どうすれば…」
チェシャ猫「そこは、自分で考えないとねぇ。今までの自分を思い出してごらん?君は国の為に一体何をしたのかなぁ?」
女王様 「私なりに、思っている事を大臣たちに伝えてみたわ」
チェシャ猫「どうやって?」
女王様 「どうって、手紙を書いたり、召使に頼んだり…」
チェシャ猫「それで、どうだった?」
女王様 「ちっとも聞いてくれなかった」
チェシャ猫「どうして聞かなかったのかなぁ?」
女王様 「私がまだ子供だから?力が無いから?」
チェシャ猫「そうじゃないさぁ。もっとよーく考えてごらん」
チェシャ猫、姿を消す。
女王様 「考えろって言われても…」
白ウサギ走って舞台上に出てくる。
白ウサギ「陛下!ここにいらっしゃったんですか」
女王様 「白ウサギ、私の事どう思う?」
白ウサギ「えっ?いきなりそんな事聞かれても困ります」
女王様 「いいから答えて、白ウサギ。あなたも私には国を治める力は無いと思う?」
白ウサギ「え、あ、う~ん、そんなことは無いと思います」
女王様 「嘘はつかないで。今まで自分の身の回りの事は、何でも思い通りになったから、その外側の事はどうでもよかった。でも、女王になってしまったから、色々勉強もしたし、国を治めるための法律なんかも勉強したつもりよ。だけど、どうしても人前には出られないの!」
白ウサギ「そこまで自覚なさっておられたのですね。陛下を何とかしたいという私の思いから、勝手な行動を取ってしまい、申し訳ありません」
女王様 「そのことについてだけど…、不思議じゃない国の人の言葉は強烈だったわ。でも、何かを伝えたかったって言うのを感じたの」
白ウサギ「…そうでしたか」
女王様 「白ウサギ、ティナともう一度話してみたい!」
白ウサギ「陛下!素晴らしい勇気です。ならば早々にティナのもとへ向かいましょう」
女王様 「えぇ!」
白ウサギ、女王ともにはける(暗転)

第六章
帽子屋、ムーンウォークで舞台上に出てくる
帽子屋 「さあて。どうやって仲直りしようとしているあの子たちの邪魔をしようかね。ティナが女王を殺してくれないとすると、俺がやるしかないようだな…」
帽子屋ニヤリと笑う。そこに猫の鳴き声。
帽子屋 「ん?この変な鳴き声は…チェシャか?」
チェシャ猫「鳴き声だけでよーくわかったねぇ?」
帽子屋 「やっぱりな。俺がお前の鳴き声を聞き間違わけないだろう?昔からの大親友の声は耳に残っているのさ」
チェシャ猫「君と大親友になった覚えは全くないんだけどなぁ。ただの腐れ縁だろぅ?しかし、君は相変わらず腹黒い事ばかり考えるねぇ?まさか女王を殺すなんて言い出すたぁね。」
帽子屋 「チェシャ、お前は今の国の現状に問題があるとは思わないのか?」
チェシャ猫「僕は別におもわないさぁ。国がどうなろうとねぇ。ただ…」
帽子屋 「ただ?」
チェシャ猫「子供を利用する君のやり方には、賛同しかねるねぇ」
帽子屋 「あれは利用ではなく教えてやっているのさ。この国を建て直すのにあんな腑抜けな女王はいらないという事をな。」
チェシャ猫「だから殺すのかぃ?」
帽子屋 「別の女王を立てる方法が他にあるなら、それに越した事は無い。俺だって、物事は穏便に済ませたいんでね。そこでだ。チェシャ、お前の力を借りたいんだ」
チェシャ猫「そう言って君はいつも、僕を利用したがるねぇ。」
帽子屋 「俺はお前を利用したい訳じゃないさ。なにせ、大親友だからな。それよりも、お前が仲間になってくれればあんな子供を利用しなくて済むし、なにより女王を殺すこともなくなるさ。」
チェシャ猫「だからただの腐れ縁…まぁそこはもういいか。しかし、君の言葉は僕には全く信用できないなぁ。それに僕は誰の味方になる気もないしねぇ。」
帽子屋 「…」
チェシャ猫「おっと、そろそろ行かなきゃぁ。それじゃあまたねぇ。」
帽子屋 「おいっ!チェシャ!」
帽子屋、舞台に立ち尽くす。
帽子屋 「チッ。チェシャの奴め。アイツが仲間にならないのならやはりティナを…いや、二人の仲を険悪にするのが先だな」
帽子屋またもやカッコつける。そしてムーンウォークではける。

第七章
ティナゆっくりと舞台上に現れる。
ティナ 「やっぱり女王様には私から謝ったほうがいいのかな…」
女王、ティナの方へ歩いてくるもティナを見ては隠れて
ティナ 「でも、女王様の気持ちを変えるためには、女王様にも自分のことを自覚してもらわなきゃなんないし…」
女王様 「あの子、何してるのかしら…。」
ティナ 「う~ん、どうしたらいいのかなぁ」
帽子屋、ムーンウォークで現れ、女王に近寄り
帽子屋 「これはこれは、女王陛下。こんなところで何をしていたんですか?」
女王様 「さ、散歩をしていただけです」
ティナ 「盗み聞きしてたの?」
女王様 「ち、ちがう…!」
帽子屋 「おやおや、ずっとここで聞いていたくせに」
女王様 「ちがうの…私はただ…」
ティナ 「ちがくないでしょ?ここに隠れていたじゃない」
女王様 「私はティナともう一度話がしたかったんです!」
帽子屋 「やっとちゃんと口を聞いたと思えば見え透いた嘘を」
ティナ 「帽子屋は黙ってて!…ねぇ、それは本当?」
女王様 「え、えぇ…。」
ティナ 「…ごめんね」
女王様 「え…?」
ティナ 「役たたずとか、頼りにならないとかいって…ごめん」
女王様 「いえ、私こそ…ごめんなさい」
ティナ 「私、絵本で見たこの国に憧れてたの…一度行ってみたいなぁって、夢ばかり抱いていたの。実際来てみたら。国が危機的状況だって聞いて、私はあなただけのせいにしようとしていたの」
女王様 「…私のせいですよ。私がちゃんとしなかったから…」
帽子屋 「そうだよ、女王様」
ティナ 「たしかにそれもあるわ。でも、無理だろうってはじめからやらせなかった大臣たちにも責任はあるじゃない。あなただけ責任を感じるなんておかしいわ」
女王様 「ティナ…」
帽子屋 「笑わせるな!いいだろう殺すのは女王だけにしようと思ったが二人仲良くあの世にいけ!」
帽子屋ナイフを取り出し二人に斬りかかる。そこへスペードの2、3が現れる。
SP2 「帽子屋!そこまでだ!」
SP3 「女王陛下に何て事を!」
SP2、3に取り押さえられる。
帽子屋 「離せ!俺はこの国を変えるんだ…!!」
女王様、帽子屋の前に行き
女王様 「この国を変えるのは、この私です!あなたの好きなようにさせはしません!!」
帽子屋 「箱入り娘が!どうやってこの国を変えるんだ!無理に決まってるだろ!!」
女王様 「大臣たちは既に更迭しました。これからは私の理想の世界を目指します」
(暗転)

第八章
SP2、3に拘束されている帽子屋を中央にして、裁判が行われている
白ウサギ「それでは、判決を申し渡す。被告人帽子屋は女王に対し、明らかな殺意を持ち、刃物を持って襲いかかった。これは女王に対する明らかな反乱であり、この国の秩序を著しく乱した罪は重い。女王に対する殺人未遂は、命を持って償うものと定められている。従って、帽子屋をこの場にて死刑に処す!」
ティナ走って帽子屋の前へ
ティナ 「待って!殺さないで!!」
女王様 「ティナ、その人が何をしたか分かっているでしょ?どうして止めるの!」
ティナ 「わかってるわ。でもね、殺すのは違うと思うの。なんていうか…確かに悪いことはしたかもしれない、でもこの人もこの人で国を救いたかったのよ。それも悪いこと?」
帽子屋 「ティナ…」
女王様 「部外者は立ち去りなさい。この国の恩人であろうと裁判を邪魔することはゆるされません。」
ティナ 「知らないわよ、そんなの。この人は誰かの命を奪ったの?奪ってないじゃない!なのに何故命を差し出さなきゃいけないの?おかしいじゃない」
女王様 「それ相応の罪を犯したのだから仕方のないことです。これ以上口答えをするようなら貴方にもそれなりの処罰を与えなくてはいけなくなりますよ?」
ティナ 「でも…」
帽子屋 「いいんだよ、ティナ。俺は殺される運命なんだよ。」
ティナ 「なんでそんな風に命を捨てられるの!?まだ生きられるじゃない、なんで命を無駄にするのよ!」
帽子屋 「仕方ないだろ。この国なら当たり前の処罰だ」
ティナ 「でも、でも…もう違うじゃない。今までのこの国じゃないじゃない」
女王様 「それは…」
ティナ 「もう分かったでしょ?あなたのお母さんのやり方がよかったわけじゃないって」
女王様 「確かにそうかもしれない。でも…私のやり方がいいとも限らないでしょ?」
ティナ 「そんなのやってみなきゃわからないじゃない。」
女王様 「…」
ティナ 「あなたにしかできないことをしましょうよ」
女王様 「裁判長、判決に異議を唱えます」
白ウサギ「女王の異議があれば、判決を取り下げる事も出来ますが」
女王様 「帽子屋、あなたを生かすことにします。しかし、当分は兵の見張る中で働いてもらいます」
白ウサギ「陛下!」
帽子屋 「何故、そうやって…。殺せばいいじゃないか!俺の野望は崩れ落ちたんだ、生きていたって意味がないだろう!?」
ティナ 「意味がない!?ふざけないでよ!野望だろうと夢だろうとこれから探せばいいじゃない!」
帽子屋 「そう簡単に見つかるものか!」
ティナ 「あんたバカじゃないの?簡単に見つかるわけないじゃない!そんな簡単に見つかったら誰も苦労しないわよ!」
帽子屋 「ティナ…」
ティナ 「だから、ゆっくり探しましょうよ。それとも女王様の気持ちを無にするつもりなの?」
帽子屋 「…」
ティナ 「あなたは本当は優しいのよ。だから大丈夫、きっと見つかるわ」
帽子屋 「女王様…」
(暗転)

第九章
アリス 「ティナー」
ティナ 「お母さん!?」
アリス 「ティナー、どこなの?」
ティナ 「お母さんに呼ばれているような気がする」
白ウサギ「ってことは、そろそろ時間だね…。」
ティナ 「えぇ、いろいろとありがとう」
女王様 「お礼を言うのはこちらです。この国を救ってくれて…ありがとう」
ティナ 「私は何もしてないわ?あなたが頑張ったからこそじゃない。」
女王様 「いいえ、あなたがいなかったらきっと私は女王じゃなくなっていたわ」
白ウサギ「本当にありがとう。また、会えるかな…?」
ティナ 「会えるわよ、きっと。信じていればね」
女王様 「次会ったときは、もっとたくさん話しましょうね」
ティナ 「もちろんよ!せっかく仲良くなれたんだもの。…これからは、しっかりね?」
女王様 「うん。自信はないけど、やれるだけの事はやってみるわ」
ティナ 「うん、じゃあね」
女王と白ウサギ別れる。と、帽子屋走ってティナの元へ
帽子屋 「ティナ!…ティナ、もう帰るのかい?」
ティナ 「えぇ。お母さんが心配するもの」
帽子屋 「そうだな。アリスにもよろしく頼むよ」
ティナ 「わかったわ、…もう、あんなことしちゃダメよ?」
帽子屋 「わかってるよ。また君に会えた時に合わす顔が無くなっちゃうような事は、もうしないよ。それからこれ。俺からのプレゼント」
帽子を渡す。
ティナ 「あなたのトレードマーク、もらっちゃっていいの?」
帽子屋 「うん、古い自分とはおさらばさ」
ティナ 「わかった。大切にするね。それからさ、ムーンウォーク。なかなかイケてたよ」
帽子屋 「いやぁ」
ティナ 「…じゃあ、そろそろ行くわね」
帽子屋 「あ、ティナ…」(音楽で台詞が聞こえない)
(暗転)

アリス 「ティナー?そろそろ帰らないと風邪ひくわよー!」
ティナ 「んー…はーい!…あれ、夢かな?」
ティナ立ち上がる
ティナ 「あ、帽子!!ってことは…夢じゃなかったんだ!私も不思議の国に行って来たんだ」
ティナ帽子をかぶり、ムーンウォークで退場。はけると同時に全員登場。カーテンコール。

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